現代「子ども」暴力論

現代「子ども」暴力論 の詳細

芹沢さんの本を読むのは久しぶり。１０年以上前の本だけれど、なかなか興味深かった。キーワードは「イノセンス」。子どもが自分の意志に関係なく生まれることからくる、無-責任性。子どもは、個の確認、対あるいは集団への欲求によって、自らのイノセンスを解体して、社会化され、成熟する。そのプロセスを周囲の大人、学校、社会が受容するということがうまくいかないことからくる、さまざまな問題をていねいに分析する（いったいどれだけの資料を読み解いたことやら）。そして面白いのは、子どもを抑えつける親や教師たちも、自分たちの無-責任、善意を信じて、つまり自分たちの側のイノセンスという立場に立って、子どもを抑えつける、という逆転の指摘だった。そこから体罰、しつけは、大人としての自覚も自己批評もなくエスカレートしてしまうし、体罰を批判するものへの嫌がらせ、体罰教師を支持する嘆願運動なども起こってくるということ。学校は戦場である、分かりやすく言い換えれば戦後に継承された日本軍である、という視点も大切にしたい。この本の分析から、不景気ばかりが語られ、弱者が踏みつけにされる現在への距離はほんの少しに過ぎない。作家や文芸評論家の物言いに比べて、自ら責任を持って発言しようとする著者の誠実さが伝わってくる。